美術館つれづれなるまゝ日記(REDON編)

先日ルドン展を観てきた

新宿の損保ジャパン東郷青児美術館にて開催されていた。4/20~6/23 オディロン・ルドン 会場に展示されている絵を順序を追って拝見させて戴いた。 幼少期の作品はロマン主義的な作風で、当時の師であるゴランの影響を受けていた。フランスのボルドーで育った彼は歴史的風景画の風潮で街を描いた。 その後彼の絵の特徴である白黒で表現された作品が多く展示されていた。 いわゆる ” ノワール(黒)の時代 ” である。 ノワールと聞いてすぐさま絵とは関係ないブータン・ノワールを思い出してしまった・・・僕の好物の料理である。濃厚で非常に美味である。 本題)ノワールの時代と言われる程、白と黒で巧みに思想を表現している。紙にエッチングやリトグラフ、黒インクと言ったものである。 描いている内容だが、蜘蛛に人の顔が描かれたものや、植物の房に人面が描かれていたりと自然界に在する物や風景に人間的な特徴を同一化させて描かれていた。 日本で言うと”妖怪”の様な絵である。  

妖怪と聞くと水木しげるの漫画を思い出すが、実は日本の文化の中で大事な存在である。 妖怪とは霊魂や神の存在を前提としていることである。自然界を含めた万物に霊魂や神が宿ると考えられている。”物を粗末にしたらバチがアタル””食べ物に感謝して食べなさい” 等と今でも日本の文化の中に深く浸透している。初詣に出向いて祈願をしたり、村の守り神としての道祖神、大木にしめ縄をして祀ったりと知らず知らずの内に自然界に対する畏敬の念が生活の中に溶け込まれている。”モッタイナイ”も日本から出来た単語である。

時代とともに科学技術が発展し、雨、台風、雷、地震と言った自然現象が科学的に分析する事が可能になってきた現代だが、昔の人はこれらは自然に在する神の怒りと思い、それを鎮め、よき恵みをもたらせてくれるように崇敬した。これが八百万の神(やおろずのかみ)として崇められている。 生態系のピラミッドの頂点に立つ人類が自然までもを科学的な視点で捉え立証し安堵感を得ていることも必要な事だとは思うが、昔の人のように畏怖や畏敬の念を人間を超えた大いなる存在に向け祈ることも、人間の本能的な”心”の安堵感を得る大事な行いだと慮る。

この様な崇敬心を持つことは、人間の本能的なことである。これが宗教心となるとまた別で、人為的な様相が交差してくる。崇敬心に触れるということは例えば自然の木や草、石、動物などに畏敬の念を感じること、たまにはスマートフォンの画面を離れて自然に触れ合い感じ取ることは大事な事だと思う。人には大いなる存在が必要で、その様な傘下にいないと自己意識の膨張の先には破滅がつきものである。

ルドンの ”ノワールの時代” からこのような日本古来の文化との共通点を感じた。 幼少期をボルドー近郊の自然に溢れた田舎で育ち そして 植物学者のクラヴォーと出会い植物学を習い、顕微鏡下の例えば胞子などの存在と幼少期の自然との思い出を合体させた形があのような不思議な形状を創作させたのではと思った。

ルドンは夢や幻想の作家と称されていることをしばしば耳にする。 しかし、夢や幻想と言った自己の内面に在する世界観の支配に沿った思想だけでは、あのような”存在感”のある作品は創造できない。その創作の根底にあるものは”大いなる存在の内に在する生命の理由”なのではと感じた。

晩年になると、白黒だけで表現してきた画風を次第に離れ、色彩豊かなものへと変貌を遂げた。 油彩やパステルを使用した作品が多くみられ、一枚の絵のどの箇所例えば花びら一つ見てもまるで一つの生物の様な感触を与えてくれる。花びらが、時には蝶に見えたり、時には目に見えたりと、ノアールの時代で描かれていた物への擬人化もしくは生命体への昇華と言うべく理念として挙げてあることが伝わってきた。 色彩を多様化することによってノアールの時代で描かれていたように輪郭に執着しなくて済む。 というのも、赤や青、黄色と言った色自身が手を結ぶことによって、理屈における表現方法として使用される輪郭誇張のような絵画の世界を超越した存在感を産み出してくれている。

ルドンの作品では個人的にはパステル画が好きである。 パステルは顔料を粘着剤で固めたものであるが、紙に描くときは粉末が固着するので顔料自体の色が生々しく描ける。ブオンフレスコ画に一番近い色を醸し出せる身近な画材とも言える。 顔料自身の色をそのまま生かせるパステル画やフレスコ画は先ほど述べた様な、全体の内の個における生命を一貫とした主張には適した画法である。 入館しようとしたときに気品のある男女が近づいてきてルドン展の招待券をくれた。(◎_◎)

 

  • Posted on 2013年7月2日 23:46
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